配布資料 v2.1 · p.1
ダクトの圧損計算
講義テキスト・計算例・演習・用語と数式 v2.1(2026年10月)
この資料について
PHJ 東海支部の勉強会「失敗しないダクト計画」の手元資料です。2026年3月6日の v1.0 を見直し、計算の数値を、計算アプリ(monosashi ダクト圧損計算・お試し版)と同じ計算部品ductloss-core 0.4.0(オープンソース・MIT)で出し直しました。お試し版の例題と同じ値になります。
表の数値は小数 2 桁、本文は 1 桁に丸めています。丸めた値どうしを足すと、最後の桁が合わないことがあります。
v1.0 からの主な変更
- 例題に吸込側(外気フード〜送風機)を足し、必要静圧 = 上流側(吸込)+ 下流側(吹出)で示しました(6 ページ)。
- 曲がりの相当長を直しました。v1.0 の値(φ100 で 0.22 m)は、タイロン グラスダクトの線図「90° 曲り部の直管相当長さ」の読み違いでした(最小曲げ率から出した曲げ半径の、円弧の長さ)。線図の各径と最小曲げ率の交点の値(φ100 で 1.32 m)に直したので、例題の合計は v1.0 と違います(吹出側のクリティカル 27.2 → 37.3 Pa。12 ページ)。
- 送風機との照合を「計画風量のとき、その設定の P-Q 特性で出せる機外静圧が、必要静圧以上か」に直しました。カタログの機外静圧は定格風量での値で、上限ではありません(7 ページ)。
- この資料の係数(λ・曲がり・分岐・端末)が何の値で、独立した資料ではどのくらいかを 9 ページにまとめました。
- 演習の番号と単位を直し、答えを別紙にしました。
- 言葉を、アプリと計算書の言葉(必要静圧・上流側/下流側・ルート・クリティカル・機外静圧・設計点・運転点)にそろえました。
大事な注意
この資料とお試し版の係数のうち、λ 0.05・分岐 ζ 1.11・端末 5 Pa は勉強会の例題のための仮置きの値で、独立した資料による裏付けはありません。曲がりの相当長はタイロン グラスダクトの線図の値で、グラスダクトを最小の半径で曲げたときの値です(ほかのダクトの曲がりには使えません)。式と手順(ダルシー・ワイスバッハ、局部損失 ζ·q、ルートの積み上げ、送風機の特性との照合)は、教科書・国の技術資料と同じです。
実際の設計では、使うダクト・部材・機器の資料の値で計算し、施工後に風量を測って調整してください。この計算は設計風量での計算で、実際に流れる風量を予測するものではありません。
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講義テキスト(全館空調・ルームエアコンの理解)
この講義で伝えたいのは、換気・全館空調が「何を実現しようとしているか」と、それを現実の建物で成り立たせるために、なぜ圧損計算とダクト計画、さらにファン設定の確認とファン特性の理解、そして風量の測定と調整が要るのか、という一連の筋道です。結論から言うと、空気は「均等に流れる」ことを前提にしてはいけない。狙った性能を出すには、経路と抵抗(圧損)を設計し、最後は測って整える必要があります。
1. 換気・全館空調がやろうとしていること(目的を 3 つに分ける)
① 衛生(汚れの制御) CO₂・臭気・VOC などの汚れを薄めて排出すること。設計の出発点は必要な外気量(換気量)です。どの部屋に外気を入れ、どこから排気し、室内をどう通すかまで含めて衛生が決まります。
② 熱(温度の制御) 暖房・冷房の熱を各室へ届け、温度差を小さくすること。熱を運ぶには空気を動かすしかない。温度差のある空気を必要な量だけ動かせないと、熱は届きません。
③ 水(湿度の制御) 湿度は温度よりも運転条件に左右されやすい領域です。この講義では土台として位置づけ、まず風量・経路・圧損の考え方を固めます。
2. 圧損計算がやっていること(何を積み上げているか)
圧損計算の本質は難しい式ではありません。直管・曲げ・分岐・末端(吹出口・吸込口・フィルター等)が生む抵抗を積み上げて、その経路を空気が通るためにどれだけ押す力が要るかを見ています。言い換えると、圧損計算は「空気の流れやすさ/流れにくさ」を経路ごとに見積もる作業です。
大事なのは、設計者が変えられる範囲(自由度)の大小です。
- 直管(長さ・径・材質)は設計の影響が大きい
- 曲げは個数と曲げ方で効く
- 分岐は形式で差が出やすい
- 末端は製品特性が支配的で、自由度は小さめ
現場で苦しむ前に、自由度の大きいところから抵抗を整えるのが合理的です。
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3. 気密測定は「換気計画が成り立つ前提条件」の確認
パッシブハウスの考え方の土台は、漏気を防ぐことです。外皮の隙間から空気が出入りすると、その分だけ熱損失が増え、計画した性能が崩れます。気密は「暖冷房が効きやすい建物」の土台です。
もう一つの意味は、気密が高いほど室内の空気の流れを制御しやすくなることです。空調計画の信頼性はダクト施工の品質に強く依存しますが、同じくらい建物の気密にも依存します。(気密測定では決定係数や αA 値を確認し、測定として成り立っているかを見ます。)
4. ファン特性を把握する(先にファン設定とファン特性を確かめる)
風量調整に入る前に、まずファンの設定とファン特性を最優先で確認します。ここがあいまいだと、あとで設定や運転点が変わった瞬間に、配分も総量も崩れます。
この段階で「設定が固定されていること」と「その設定で出せる範囲(特性)が分かっていること」をそろえます。そのうえで、P-Q 特性(風量ごとに出せる機外静圧)を見ながら、計画風量のとき、その設定(ノッチ)で出せる機外静圧が、必要静圧(吸込側 + 吹出側)以上かを確かめます。
確認項目
- 風量の設定(回転数・レベル等)を確認し、「どの設定で合わせるか」を固定する
- その設定の P-Q 特性(風量と機外静圧の関係)を確認する
- 計画風量のときに出せる機外静圧が、必要静圧以上かを確認する
5. ダクト計画の役割(ダクトでできるのは「粗バランス」)
必要風量が決まり、ファン設定とファン特性の前提が固まったら、次は現場調整に頼りすぎないための土台作りです。ダクト計画は見た目のためではなく、経路ごとの抵抗差を小さくして、偏りにくい土台を作ることです。
ダクトでやるのは粗バランスです。粗バランスが取れていれば、調整で足す抵抗は最小で済みます。逆に、粗バランスが崩れた状態を調整だけで直そうとすると、どこかを大きく絞ることになり、「計画風量が出ない」問題を呼び込みやすくなります。
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6. ダクトだけではそろわない(測定・調整は「計画風量で同じ圧損」を目指す)
ダクト計画で抵抗差を小さくしても、現実には完全にはそろいません。施工の誤差、曲げや分岐の作り方、末端の個体差が重なり、設計上はそろっているつもりでも、測ると分岐ごとに流れ方がずれるのが普通です。
だから、現場の測定と調整は分岐ごとのつり合いを作る作業です。調整の狙いは、各室の数字をそろえることそのものではありません。風量を合わせる = 分岐先のルートの圧損をそろえること。各ルートが計画風量を流れたときに同じ圧損になる状態を目指します(7 ページのダンパ調整)。
端末(吹出口)を選ぶときは、カタログのP-Q 線図(風量と圧損の関係)で、計画風量のときに何 Pa の圧損になる端末かを確かめます。端末の圧損が大きくばらつくと、同じ圧損を目指す設計・調整が難しくなります。
7. 風量を上げ下げすると何が問題になるか(風量レンジの落とし穴)
圧損は、風量が増えるほど急に大きくなります(λ・ζ を一定とみなすと風量の 2 乗。実際の直管は λ が風速とともに少し下がるので 1.8〜1.95 乗程度)。このため「低風量でうまくいった調整」が、高風量では別の結果を生むことがあります。
- 同じファンに複数の経路がつながる場合、風量を上げ下げしても、配分は理屈の上では大きく変わりにくい
- 本当の問題は、低風量での調整が、高風量で「効きすぎて」計画風量をつぶすこと。低風量ではダンパを絞っても風量が出ているように見えるが、その操作は経路に抵抗を足している。高風量に上げた瞬間、その抵抗が急に重くなり、ファンが押し切れず計画した総風量が出ない
結果として「配分は整っているのに総量が足りない」状態になります。問題は配分の崩れよりも、調整のやり方次第で計画風量が出なくなることです。
試してみる:風量と圧損
この実験だけの条件を変えます。本文と演習は、配布資料の条件のままです。
計画風量 120.0 m³/h / 必要静圧 51.2 Pa
吸込側 13.9 + 吹出側 37.3 Pa
元の例題の 1.00 倍の圧損です。λ・ζ を固定した教材なので、風量の倍率の2乗になります。
最後に:設計者が押さえる順番(全館空調の本筋)
- 目的(汚れ・温度・湿度)を分け、必要風量を置く
- 経路と抵抗を考える(圧損計算)
- 前提条件を確認する(気密)
- ファン設定とファン特性を確認する(計画風量で、その設定の機外静圧が必要静圧以上か)
- ダクトで粗バランスを取る(抵抗差を小さくする)
- 測って調整する(計画風量で同じ圧損/分岐ごとのつり合い)
- 風量レンジで破綻しないか確認する(低風量で調整 → 高風量で詰む、を避ける)
8. ルームエアコンのアプローチ(全館空調とは別の考え方)
- サーモオフが頻発しやすい(除湿が不安定)
- 循環の難しさ(サーキュレーションファンで LDK から各室へ回す考え方。各室の負荷が大きいほど難しい)
- 温度差が無ければ熱は送れない
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圧損計算の例(吹出側)
| 経路 | ダクト(径・長さ・風量) | 直管 | 曲げ(90°) | 曲げ | 分岐/端末 | 分岐/端末 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| a | φ125・3 m・120 m³/h | 5.31 | 90°×2 | 5.38 | 分岐 ζ 1.11 | 4.91 | 15.61 |
| b1 | φ100・3 m・60 m³/h | 4.05 | 90°×2 | 3.57 | 分岐 ζ 1.11 | 3.00 | 10.62 |
| b2 | φ100・4 m・60 m³/h | 5.40 | 90°×4 | 7.13 | 吹出口 5 Pa(仮) | 5.00 | 17.54 |
| c1 | φ100・3 m・30 m³/h | 1.01 | 90°×4 | 1.78 | 吹出口 5 Pa(仮) | 5.00 | 7.80 |
| c2 | φ75・2 m・30 m³/h | 2.85 | 90°×2 | 3.24 | 吹出口 5 Pa(仮) | 5.00 | 11.09 |
単位 Pa。経路ごとに、直管・曲げ・分岐(または端末)の圧損を積み上げます。
計算のしかた(この例の係数)
- 風速 v = Q/3600/A、動圧 q = ρv²/2(ρ = 1.2 kg/m³)
- 直管 = λ・(L/D)・q(λ = 0.05)。例: 経路 a は φ125・120 m³/h で v 2.72 m/s、q 4.43 Pa、1 m あたり 1.77 Pa、3 m で 5.31 Pa
- 曲げ = 1 m あたりの圧損 × 曲げの相当長(90° 1 個あたり φ75 1.14 m・φ100 1.32 m・φ125 1.52 m。タイロン グラスダクトの線図で、各径と最小曲げ率の交点の値。曲がった部分の長さを含むので、直管の長さには曲がりの部分を入れない)
- 分岐 = ζ・q(ζ = 1.11。q は分岐を通る合計の風量と、根の側のダクトの径で求める)
- 吹出口 = 5 Pa(仮)。アプリでは「計画風量で 5 Pa」になる ζ に直して保存し、風量が変われば ζ·q で変わる
この例の λ・分岐 ζ・端末 5 Pa は例題のための仮置きの値、曲げの相当長はグラスダクトの線図の値です(12 ページ)。何の値か、独立した資料ではどのくらいかは 9 ページ。
配布資料 v2.1 · p.6
ルートごとの集計と必要静圧
吹出側:ルートごとに経路の圧損を足す
| ルート | 経路 | 経路の圧損 | 合計 | |
|---|---|---|---|---|
| ルート1(30 m³/h) | a + b1 + c1 | 15.61 + 10.62 + 7.80 | 34.02 | |
| ルート2(30 m³/h) | a + b1 + c2 | 15.61 + 10.62 + 11.09 | 37.32 | クリティカル |
| ルート3(60 m³/h) | a + b2 | 15.61 + 17.54 | 33.15 |
いちばん圧損の大きいルート(クリティカル。最不利経路とも呼ぶ)はルート2の 37.3 Pa。これが送風機の下流側(吹出側)の必要な圧力です。
吸込側を足す:必要静圧 = 上流側(吸込)+ 下流側(吹出)
空気は外気フードから入り、外気ダクトを通って送風機に吸い込まれます。この区間の圧損も送風機が受け持ちます。
| 部材 | 内容 | 直管 | 曲げ | 端末 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 外気ダクト | φ125・2 m・90°×2・120 m³/h | 3.54 | 5.38 | 8.92 | |
| 外気フード | 5 Pa(仮) | 5.00 | 5.00 | ||
| 上流側(吸込側のルートの最大) | 13.92 | ||||
アプリのお試し版の例題は吹出側だけから始まり、点検に「吸込側の経路がありません」と出ます。送風機の上流側(OA)に外気ダクト(φ125・2 m・90°×2)と外気フード(Pa 入力 5)を足すと、この表と同じ値になります。
試してみる:径と経路の圧損
この実験だけの条件を変えます。本文と演習は、配布資料の条件のままです。
吹出口の径・抵抗係数 ζ は固定し、ダクト c2 の径だけを変えます。径の変わり目の損失は、この実験には含めません。
| ルート | 元の例題 | 変更後 |
|---|---|---|
| ルート1(a → b1 → c1) | 34.02 Pa | 34.02 Pa |
| ルート2(a → b1 → c2) | 37.32 Pa | 37.32 Pa |
| ルート3(a → b2) | 33.15 Pa | 33.15 Pa |
調整は端末に抵抗を足す計算です。ダンパの開度や、現場での調整完了を示すものではありません。
計画風量 120.0 m³/h / 必要静圧 51.2 Pa
吸込側 13.9 + 吹出側 37.3 Pa
配布資料 v2.1 · p.7
送風機との照合・ダンパ調整
計画風量で、送風機が必要静圧を出せるか
- 計画風量 120 m³/h のとき、この送風機(例題の架空の特性)が出せる機外静圧は 60.0 Pa。必要静圧 51.2 Pa 以上なので、計画風量を確保できる(余裕 8.8 Pa)。
- 系統の抵抗を、設計点を通る ΔP = k·Q²(k = 51.2 / 120²)で表すと、特性との交点(運転点)は約 127.2 m³/h(計画の 106%)。何もしなければ計画より多く流れる見込みで、ノッチを下げる・調整で抵抗を足すなどで合わせます。
- 運転点は推定です。各ルートの圧損がそろい(調整が施工で実現され)、風量の配分が計画どおりであることを前提にしています。
ダンパ調整:ほかのルートをクリティカルにそろえる
計画風量で各ルートが同じ圧損になるように、クリティカル(ルート2)以外の端末で抵抗を足します(クリティカルより 0.01 Pa だけ低くそろえる)。
| ルート | 調整前 | 端末の圧損 | 端末の ζ | 調整後 |
|---|---|---|---|---|
| ルート1 | 34.02 | 5.00 → 8.28 | 7.40 → 12.27 | 37.31 |
| ルート3 | 33.15 | 5.00 → 9.16 | 1.85 → 3.39 | 37.31 |
これは端末で足す必要のある抵抗の計算で、ダンパの開度ではありません(開度と抵抗の関係は製品ごとに違う)。調整が済んだことも示しません。施工後に風量を測って調整してください。吸込側の端末が複数あるときも、同じ考え方でそろえます。
試してみる:吸込側と送風機
この実験だけの条件を変えます。本文と演習は、配布資料の条件のままです。
計画風量 120.0 m³/h / 必要静圧 51.2 Pa
吸込側 13.9 + 吹出側 37.3 Pa
設定風量 120 m³/h で機器が出せる静圧 60.0 Pa/必要静圧 51.2 Pa/運転点 127 m³/h・57.6 Pa(設定風量の 106%)/→ 設定風量を確保できます(余裕 8.8 Pa)
設計点(設定風量・必要静圧)を通る ΔP = k·Q² で系統の抵抗を表した推定です。経路ごとの圧損がそろい(ダンパ調整が施工で実現され)、風量の配分が設計どおりであることを前提にしています。実際の風量は施工後の測定・調整で確かめてください
配布資料 v2.1 · p.8
風量に応じたダクト選定
同じ風量でも、径をひとつ落とすと圧損は数倍になります(単位 Pa)。
直管 10 m・風量 100 m³/h
| 径 | 風速 | この資料(λ 0.05) | タイロン グラスダクトの線図(11 ページ) | 参考:亜鉛鉄板スパイラル |
|---|---|---|---|---|
| φ150 | 1.57 m/s | 4.9 | 約 5.9 | 2.8〜2.9 |
| φ125 | 2.26 m/s | 12.3 | 約 16.8 | 6.8〜7.2 |
| φ100 | 3.54 m/s | 37.5 | 約 53.0 | 20.2〜21.5 |
| φ75 | 6.29 m/s | 158.1 | 約 235.1 | 83.0〜90.9 |
直管 10 m・風量 50 m³/h
| 径 | 風速 | この資料(λ 0.05) | タイロン グラスダクトの線図(11 ページ) | 参考:亜鉛鉄板スパイラル |
|---|---|---|---|---|
| φ150 | 0.79 m/s | 1.2 | 約 1.5 | 0.8〜0.9 |
| φ125 | 1.13 m/s | 3.1 | 約 4.2 | 2.0〜2.1 |
| φ100 | 1.77 m/s | 9.4 | 約 13.2 | 5.8〜6.1 |
| φ75 | 3.14 m/s | 39.5 | 約 60.4 | 23.5〜25.0 |
- 「この資料」の列は λ = 0.05 の一律の値で計算(お試し版と同じ)。
- 線図の列は、11 ページの線図を画像から読み取った値(読み取りの幅 ±1 割程度)。グラスダクトは自重でたわむので、メーカーは安全率を見込むよう書いています。
- スパイラルの列は、粗さ 0.09〜0.18 mm を Colebrook の式(教科書の式)に入れて求めた λ で計算した値。
風量と圧損
λ・ζ を一定とみなすと、風量 2 倍 → 圧損 4 倍、3 倍 → 9 倍(2 乗)。実際の直管は λ が風速とともに少し下がるので、2 倍で 3.3〜3.9 倍程度です。どちらにしても、風量を増やすと圧損は急に増えます。
径については、風量が同じなら直管は D⁵、局部損失は D⁴ に反比例します(λ・ζ 一定のとき)。径が効くのはこのためです。
配布資料 v2.1 · p.9
この資料の係数について
例題の係数のうち λ・分岐・端末は、勉強会の例題のための仮置きの値です(曲げはグラスダクトの線図の値)。何の値で、独立した資料ではどのくらいかをまとめます(2026年10月の見直し)。
| 係数 | この資料の値 | 何の値か | 独立した資料での目安 |
|---|---|---|---|
| 摩擦係数 λ | 0.05(全ダクト共通) | 材料・風速によらない一律の値 | 亜鉛鉄板スパイラル・平滑な樹脂管 約 0.02〜0.04(住宅の風速)。タイロン グラスダクトの線図(11 ページ)約 0.06〜0.08。縮めて施工したフレキはさらに大きい |
| 曲げ(90°) | 相当長 φ75 1.14・φ100 1.32・φ125 1.52 m | タイロン グラスダクト フレキシブルの線図「90° 曲り部の直管相当長さ」で、各径の線と最小曲げ率の線の交点の値(12 ページ。曲がった部分の長さを含む)。グラスダクトを最小の半径で曲げたときの値で、線図の λ(約 0.06〜0.08)と組の値。λ 0.05 と組むので線図の約 7 割に出る。ζ にすると 0.61〜0.76。v1.0 の値(φ100 0.22 m)は曲げ半径の円弧の長さで、線図の読み違い | プレスの曲がり(曲げ半径=径)で ζ 約 0.2 余り。樹脂の断熱チューブ 約 0.4。フレキはもっと大きい |
| 分岐 | ζ 1.11 | 仮置き | 左右対称の 90° 振り分けで約 1.0。直進する側は 0〜0.4、細い枝へ多く流す側は 2 以上(形・流量比で大きく変わる) |
| 吹出口・外気フード | 5 Pa(仮) | 仮置き | 製品と風量で 1.6〜30 Pa 程度まで幅がある。品番の P-Q 線図で確かめる |
例題に独立した資料の中心の値を入れると(吹出側のクリティカル・概算)
- 硬いスパイラルダクト・プレスの曲がり: 23.7 Pa(この資料 37.3 Pa の −36%)
- 樹脂の断熱チューブ: 26.2 Pa / 伸ばしたアルミフレキ: 30.7 Pa
- タイロン グラスダクト(直管も線図の値): 47.8 Pa(+28%)
- 縮めて施工したフレキ: 最大で約 53.6 Pa(+44%)
同じ系統でも、ダクトの種類で 2 倍以上違います。この資料の例題は、グラスダクトの曲げ(線図の値)と一律の λ 0.05 を組み合わせた値で、特定のダクトの値ではありません。v1.0 の 27.2 Pa が硬いスパイラルの値に近かったのは、λ の多めと曲げの少なめ(読み違い)がたまたま打ち消し合ったためです。
アプリの新しいデータ:2026年10月から、アプリで新しく作るデータは「Monosashi 標準 2026」(λ は材料の粗さから Colebrook の式で、曲がりは形ごとの ζ と角度の補正で求める。出典つき)で計算します。お試し版の例題とこの資料は「PHJ 勉強会(曲がりはタイロンの線図)」の係数で計算します。2026年10月より前に保存したデータは、結果を黙って変えないよう v1.0 と同じ係数(PHJ 勉強会互換)のまま計算します。
確かな部分:式(Q=Av、q=ρv²/2、直管 λ(L/D)q、局部 ζq)、ルートの積み上げとクリティカル、必要静圧=吸込側+吹出側、送風機の特性との照合、ダンパで経路をそろえる考え方は、ASHRAE Handbook Fundamentals(2017)第 21 章、建築研究所『エネルギー消費性能の算定方法(住宅)』第五章 換気設備 付録B などと同じです。
参考にした資料:ASHRAE Handbook Fundamentals 2017 第 21 章/ASHRAE『Principles of HVAC』第 9 版 補足 Fitting Loss Coefficients(曲がり 3-1・分岐 5-33)/建築研究所 技術情報 第五章 換気設備 付録B・D/栗本鐵工所 スパイラルダクト摩擦損失線図(粗さ 0.18 mm)/住宅用断熱チューブの大臣認定 別添(λ・曲がり ζ)/タイロン グラスダクト フレキシブル 送風特性(直管 11 ページ・90° 曲り部 12 ページ)
配布資料 v2.1 · p.10
演習
答えと解き方はいつでも開けます。入力したメモは保存されません。
演習 1
答えと解き方を開く
ルートの圧損とクリティカル
- ルート1 = a 15.61 + b1 10.62 + c1 7.80 = 34.02 Pa ※ 表示の値を足すと 34.03(丸める前の値で足すと 34.02)
- ルート2 = a 15.61 + b1 10.62 + c2 11.09 = 37.32 Pa(クリティカル)
- ルート3 = a 15.61 + b2 17.54 = 33.15 Pa
演習 2
答えと解き方を開く
必要静圧
吸込側 = 外気ダクト(直管 3.54 + 曲げ 5.38)+ 外気フード 5.00 = 13.92 Pa。
必要静圧 = 上流側 13.92 + 下流側 37.32 = 51.24 Pa。例題の送風機は 120 m³/h で 60.0 Pa 出せるので、計画風量を確保できる(余裕 8.8 Pa)。
演習 3
答えと解き方を開く
ダンパ調整
- ルート1: 34.02 Pa → クリティカルより 0.01 Pa 低い 37.31 Pa にするには、吹出口を 5.00 → 8.28 Pa(ζ 7.40 → 12.27)。足す抵抗は 3.28 Pa
- ルート3: 33.15 Pa → クリティカルより 0.01 Pa 低い 37.31 Pa にするには、吹出口を 5.00 → 9.16 Pa(ζ 1.85 → 3.39)。足す抵抗は 4.16 Pa
クリティカルより 0.01 Pa 低くするのは、クリティカルが別のルートに移らないようにするため(アプリと同じ決まり)。ζ は「計画風量でその Pa になる」値。
演習 4
配布資料 v2.1 の p.11 を見て取り組みます。出典:タイロン株式会社「タイロン グラスダクト フレキシブル(各タイプ共通)」送風特性 — 直管部の送風特性。
答えと解き方を開く
1 m あたりの圧力損失
| 径・風量 | 線図(11 ページ) | この資料(λ 0.05) | 線図 ÷ この資料 |
|---|---|---|---|
| φ125・120 m³/h | 約 2.4 | 1.77 | 約 1.4 倍 |
| φ100・60 m³/h | 約 1.9 | 1.35 | 約 1.4 倍 |
| φ75・30 m³/h | 約 2.2 | 1.42 | 約 1.6 倍 |
線図の値は読み取りの幅 ±1 割程度。グラスダクトの線図から逆算した λ は約 0.06〜0.08 で、この資料の 0.05 より大きい。亜鉛鉄板スパイラルなら λ は約 0.02〜0.04 で、この資料より小さい。λ は材料で大きく変わります。
演習 5
配布資料 v2.1 の p.14 を見て取り組みます。出典:Zehnder ComfoHome CHM120・CHM200 静圧-風量特性曲線(ODA AIR FLOW RATE — STATIC PRESSURE)。
答えと解き方を開く
CHM120 の 40% 出力・120 m³/h
約 25〜30 Pa(40% の線は 50 m³/h で約 165 Pa、約 133 m³/h で 0 Pa。120 m³/h はその間で、0 に近い側)。同じ 120 m³/h でも出力(%)を上げれば出せる静圧は大きくなります(60% で約 120 Pa)。必要静圧を出せる出力を選びます。
演習 6
答えと解き方を開く
風量 120 → 480 m³/h(4 倍)
λ・ζ を一定とみなすと、圧損は (480/120)² = 16 倍。吹出側 37.3 → 約 597 Pa、必要静圧 51.2 → 約 820 Pa。実際の直管は λ が少し下がるので 4 倍の風量で 12〜15 倍程度ですが、どちらにしても住宅用の送風機では出せない圧力です。風量を増やすときは、径を太くする・系統を分ける・経路を短くするなど、ダクトから見直します。
演習 7
配布資料 v2.1 の p.13 を見て取り組みます。出典:ダイキン工業株式会社 冷暖房フリービルトイン型ルームエアコン F403ALV ファン特性(図番 4D121701)。
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F403ALV の定格風量での機外静圧
定格風量 13.1 m³/min の○印で、高静圧 3 = 100 Pa、高静圧 2 = 80 Pa、高静圧 1 = 60 Pa、標準 = 35 Pa(線図から読み取り)。同じ設定でも、風量が多いほど出せる機外静圧は下がり、少ないほど上がります(右下がり)。カタログの「機外静圧」は定格風量での値で、上限ではありません。エアコンの循環風量(吹出の合計)が定格と違うときは、その風量での値を線図から読みます。
演習 8
配布資料 v2.1 の p.12 を見て取り組みます。出典:タイロン株式会社「タイロン グラスダクト フレキシブル(各タイプ共通)」送風特性 — 90° 曲り部の直管相当長さ。
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グラスダクトの曲がり(φ150)
φ150 の線と最小曲げ率の線の交点で、最小曲げ率は約 1.62、そのときの 90° の相当長さは約 1.72 m。曲げ半径 = 150 × 1.62 ≒ 243 mm。45° なら 1.72 × 45/90 ≒ 0.86 m(線図の読み取りの幅 ±1〜2%)。v1.0 の表の φ150 0.377 m は、曲げ率を 1.6 として出した曲げ半径(150 × 1.6 = 240 mm)の円弧の長さ π/2 × 240 mm で、線図の値ではありません。
配布資料 v2.1 · p.11
参考資料:グラスダクトの直管の送風特性
演習 4 で使います。グラスダクトはたわみやすいので、メーカーは圧力損失の計算に安全率を見込むよう書いています。
配布資料 v2.1 · p.12
参考資料:グラスダクトの曲がりの相当長さ
演習 8 で使います。各径の線と「最小曲げ率」の線の交点の縦軸が、その径を最小の半径で 90° 曲げたときの相当長さです(φ100 で約 1.32 m。この資料の例題の値)。曲げ半径を大きくすると相当長さは小さくなります。θ° の曲がりは ℓ × θ/90。この資料では、曲がった部分の長さを含む値として使っています。
配布資料 v2.1 · p.13
参考資料:ダクト形エアコンのファン特性
演習 7 で使います。静圧の設定(標準・高静圧 1〜3)ごとに、風量と機外静圧の関係が決まっています。○印は定格風量での値です。
配布資料 v2.1 · p.14
参考資料:熱交換換気ユニットの静圧-風量特性
演習 5 で使います。出力(%)ごとに、風量と静圧の関係が決まっています。右側の曲線は、ダクト長ごとの系統の抵抗の例です。
配布資料 v2.1 · p.15
付録:用語と数式
圧損計算と風量調整の共通の言葉を、最小限にまとめます。アプリ・計算書と同じ言葉です。前提:空気密度 ρ は一定(1.2 kg/m³。JIS B 8330 の標準空気)、円形ダクト。
0) 用語
| 用語 | 意味 | 式 |
|---|---|---|
| 直管摩擦(摩擦損失) | 直管の内面の摩擦による損失。長いほど増える | Δpf = λ(L/D)q |
| 局部損失 | 曲げ・分岐・端末など、形と流れの乱れで生じる損失 | Δpm = ζq |
| 動圧(速度圧) | 速度に由来する圧力。多くの損失の式の基準 | q = ρv²/2 |
| 機外静圧 | 機器(送風機・熱交換器・エアコン)の吸込口と吹出口の静圧の差。外のダクトの抵抗に対して押し出せる圧力。風量ごとに決まる(P-Q 特性) | — |
| 圧力損失(圧損) | ダクトや部材で消費される圧力 | Δpf・Δpm・Δpterminal・Δpdamper |
| 1 m あたりの圧力損失 | 直管 1 m あたり。ルートの比較に便利 | Δpf/L = λq/D |
| ルート | 送風機から 1 つの端末までの経路 | Δppath |
| クリティカル(最不利経路) | 圧損がいちばん大きいルート。調整の基準 | — |
| 必要静圧 | 送風機が出さなければならない圧力。上流側(吸込側のルートの最大)+ 下流側(吹出側のルートの最大) | Δpup + Δpdown |
| 設計点・運転点 | 設計点=(計画風量, 必要静圧)。運転点=送風機の特性と系統の抵抗曲線の交点(推定) | ΔP = k·Q² |
| 風量調整(ダンパ調整) | 各ルートを計画風量で同じ圧損にそろえる。他のルートを絞って合わせる | Δpdamper |
1) 記号と単位
| ρ | 空気密度 [kg/m³] | Q | 風量 [m³/s](実務では m³/h。Q = Qh/3600) |
| D | 内径 [m](呼び径と混同しない。樹脂管などは内径が呼び径と違う) | A | 断面積 [m²] |
| v | 平均風速 [m/s] | L | 直管の長さ [m] |
| q | 動圧 [Pa] | λ | 摩擦係数(ダルシーの摩擦係数)[-] |
| ζ | 局部抵抗係数(曲げ・分岐・端末)[-] | Δp | 圧力差・圧損 [Pa] |
配布資料 v2.1 · p.16
2) 風量 Q・風速 v・ダクト径 D
Q = A·v,A = πD²/4 → v = Q/A = 4Q/(πD²)
3) 動圧 q:損失の式の基準
q = ρv²/2
4) 直管摩擦(ダルシー・ワイスバッハ)
Δpf = λ·(L/D)·q 1 m あたり:Δpf/L = λ·q/D = λ·(8ρ/π²)·Q²/D⁵
λ を一定とみなすと、風量が同じなら Δp/L ∝ 1/D⁵(径が効く)。λ は材料と風速で変わります(9 ページ)。
5) 局部損失(曲げ・分岐・端末)
Δpm = ζ·q = ζ·ρv²/2 (風量が同じなら Δpm ∝ 1/D⁴)
分岐の ζ は形・流量比・径比で大きく変わります。ζ がどの断面の動圧に対する値か(分岐は合わさった側、レジューサは細い側など)を、出典で確かめます。曲げも局部損失です。この資料の例題は、曲げを相当長(曲がり 1 個の損失を、同じ損失になる直管の長さに換えた値)で数えています:Δp = λ(ℓ/D)q。ζ にすると ζ = λℓ/D です。
6) 経路の圧損と必要静圧
Δppath = ΣΔpf + ΣΔpm + ΣΔpdamper + Δpterminal
必要静圧 = 上流側(吸込側の Δppath の最大)+ 下流側(吹出側の Δppath の最大)
7) 風量調整の考え方
7-0 ファン特性(ノッチ・P-Q 線図・制御方式)を先に決める 風量調整は、そのファンがその設定で出せる範囲でしか成り立ちません。調整の前にノッチ(段)と制御方式を決め、P-Q 線図で、計画風量のときに出せる機外静圧が必要静圧以上かを確かめます。制御(運転モード・外気温・フィルターの目詰まり等)で設定が勝手に変わらない状態を作ります。
7-1 運転点では「供給 = 消費」 運転点(その時の風量と圧力の組)では、ファンが与える機外静圧が、吸込側と吹出側の経路の圧損として消費されます。
Δpfan = 上流側の経路の圧損 + 下流側の経路の圧損(調整でそろえたあと)
配布資料 v2.1 · p.17
7-2 なぜ風量が偏るか(放っておくと楽な道へ流れる) 同じ圧力がかかるとき、抵抗の小さい経路ほど風量が増えます。ダクトの抵抗はおおむね Q² で増えるので、抵抗の小さい経路は Q が増えやすく、大きい経路は出にくい、という偏りが起きます。
7-3 調整とは何をしているか(クリティカル基準) クリティカル(いちばん厳しい経路)は開け気味にして基準にし、その他のルートは過多になりやすいので、ダンパや端末で絞って合わせます。調整後はクリティカルの Δpdamper が小さく、その他が大きくなり、同じ Δpfan で各ルートの Q がそろいます。目標は、各ルートが計画風量で流れたときに同じ圧損になる状態です。
7-4「低圧損 = 正義」ではない(調整の余白) ダクトの圧損が小さすぎると、調整で使う差圧の落としどころが取りにくく、計画風量にそろえにくくなります。逆に、端末やダンパで差圧を落としすぎると、局所の風速が上がり、騒音・ドラフトの心配が増えます。調整の余白 = 差圧の落としどころをどこに持つか。ダクト計画は計算だけでなく「調整のしやすさ」の設計です。
8) まとめ
- 調整の前提:ノッチと制御方式を決め、P-Q 線図で、計画風量のときに必要静圧を出せるか(余裕があるか)を確かめる
- 風は楽な道に流れる → クリティカルを基準に他を絞る
- 低圧損 = 正義ではない → どこで・どれだけ差圧を落とすか、調整の余白を確保する
- 係数は資料で確かめる → λ・ζ は材料・形・製品で変わる。この資料の例題の λ・分岐・端末は仮置き、曲げはグラスダクトの線図の値(ほかのダクトの曲がりには使えない)